2019年8月1日木曜日

ディープインパクト・8月・バナナ

 ディープインパクトが死んだ。競馬にはぜんぜん興味がないので、競走馬としてのそれの死に感慨は一切ない。それでも読むともなく記事を読んだら、早い死亡の原因は種付けのさせ過ぎだというので、俄然そこから情報に対して前のめりになった。
 なんでも年間200頭以上の牝を相手に、この10年以上ずっと種付けをしまくっていたそうで、それで頸椎を骨折し、安楽死という結果になったらしい。馬でもヒトでもセックスをあまりにしすぎると死ぬんだろうとは思っていたが、実際どうして死ぬのかまではきちんと考えたことがなかった。腹上死と考えれば心臓発作とかだろう、と漠然と思っていた。しかし今回の場合は首の骨折。それに関しては馬とヒトでだいぶ体の仕組みが違うだろう、馬の首はほら、長いじゃないか、とも思うが、その一方で、セックスをしすぎて首を骨折って、変な生々しさがある。セックスのしすぎはな、ここに来るんだ。そういって首のあたりに手のひらを這わすおっさんの姿が思い浮かぶ。おっさんのニヤけた口の端から黄色い歯が覗く。誰なんだこのおっさん。
 それにしたって年間200頭以上。それが10年以上。前にも書いたが、僕の将来の夢は、死後ちんことか性欲とかの神様的な存在に奉られることなのだけど、ディープインパクトを押しのけて僕がそのポジションに就くには、いったいどれほどディープなインパクトを遺さなければならないのかと、くらくらする思いだ。数では勝てない。首がもたない。雁首がもたない。

 今年も8月がやってきた。まぶしい、まぶしすぎる8月。今年は7月が、最後の1週間ほどを除いて、長引いた梅雨のせいでくすんだものだったため、9月にはもちろん持たせようもない、『夏!』が、8月というこのひと月に集約せざるを得ず、溜めこんだ精子というか、あるいは船乗りが停泊した港町での一夜で見事に子を成すみたいに、ピンポイントに凝縮され、そのまぶしさたるや、いよいよとんでもないことになっている。たぶんこの8月のまぶしさというのは、もはや可視光線のラインを越えて、紫外線やら赤外線やら、とにかくいろいろどばどば出ている。だからもうヒトにはそれが視認できず、自覚もないまま全身に降り注ぐそれを受け止めるしかない。だから朦朧とする。立っているだけで必死、という状態になる。でもそれでこそ夏だと思う。ハイに愉しみたい。

 バナナ熱が落ち着いた。この3ヶ月くらいは、バナナが常に家にないと不安という、チェーンバナナーどころではないバナナジャンキー状態になっていたが、ここへ来て急に、そんなバナナばっかり食べてもしょうがないだろう、お腹に入れるならもっとたんぱく質とかあるやつにしろよ、というスタンスになった。もちろん真夏だということも大いに影響している。すぐぐじょぐじょに黒くなるし、食べたあとの皮もなかなか臭気を放つ。バナナは南国の食べ物のはずだが、なぜ夏向きではないのだろう。輸入前提なのか。そんな作物ってあるか。
 ところで冒頭の「バナナ熱」という言葉は、なんか実際にありそうな病名だと思う。実際バナナの間では伝染病が流行っていて、将来バナナが採れなくなるかも、みたいな話を聞いたことがある。それをバナナ熱と呼ぶのかどうかは知らない。あるいはやはり、勃起のことをバナナ熱と呼ぶのもありなのではないかとも思う。俺のバナナ熱、このままじゃ治まりそうもねえから、熱を吸い取ってくれよ……。イケメンが言ったらかっこいいんじゃないでしょうか。