2021年3月31日水曜日

ホイール・桶・半年

 先日スタッドレスから普通のものへタイヤ交換をしたのだが、それから数日後に、その日に換えたタイヤはわが家のものではなく三女の車のものだったということが判明し、なかなか面倒だった。世話してもらっておいていうのもなんだが、こちらとしては「だってうちのタイヤ交換の日、実家に行ったらお義父さんが倉庫からもうそのタイヤを出してくれてたんだもん」ということになる。そうなったらそこからは心を殺し、唯々諾々とタイヤを運び、指導を受けつつ適当にヨイショし、一刻も早く作業が終わるよう推し進めるばかりだった。ホイールがぜんぜん自分のものとは違うやつだ、などという間違い探しの超難問が判るはずがない。そもそも自分のホイールがどんなものだったか、このことはこのたびのスタッドレスタイヤへの交換の際にもさんざん、「ホイールの話にまるで興味がないよー」という嘆きとして記述していて、今回の取り違え事件によって期せずして、それが本心からの叫びであったことが証明されたわけだが、僕は本当に認識してなかったのだ。それに対して三女というのは、わざわざ軽ではなく普通車に乗っているような人間なので、ホイールにもそれなりにこだわりがあるらしい。次の冬までお互いのタイヤを使えばいいんじゃない、とさえ僕は思ったのだが、そういうわけにはいかないらしかった。なのでこのことが判明したあと、仕方なくまた実家へ行き、数日前にスタッドレスから交換したばかりの普通タイヤを、正しい普通タイヤに交換するという作業をファルマンとふたりでした。それでその際に見較べてみたら、三女のタイヤのホイールと、僕のSUZUKIのSのマークが入ったホイールは、ぜんぜん違った。僕のそれがゲッターロボだとしたら、三女のそれは真・ゲッターロボのようだった。伝わるだろうか。僕のはセル画時代の、古き良きロボットアニメのような平和さであるのに対して、三女のはゲッター核分裂が起り、劇画っぽくなり、ぬめぬめ動くような、なんかそんな感じということだ。まあいちど真・ゲッターロボに乗り込んでしまった人間は、もうただのゲッターロボには戻れないよな、とふたつのホイールを眺めて思った。もちろん僕は相変わらずどうでもいいけど。作業をしながら、「自由に使えるお金がいくらあったらタイヤのホイールを買い替えるか」ということを考え、たぶん400億円くらいあっても僕はこれにはお金を使わない、と思った。

 新生活でいろいろなものを捨て、いろいろなものを買ったが、その中でベスト3に入るいいものとして、風呂で使う桶がある。ダイソーで、100円で買った。
 僕もファルマンも、手桶や洗面器を駆使するのが下手で、お湯を張った風呂のときも、すぐにシャワーを使ってしまう。水道代の無駄だろう、ということをたまに省みては、もはや風呂場から追放してしまっていた手桶や洗面器を再び持ち込むのだが、やはりうまく使えず、日々使わないそれというのは、流れる水は腐らないの理屈通り、あっという間にカビて、結局また風呂場から追放されるのだった。それが繰り返された岡山での暮しだった。
 新しい住まいになるにあたり、その流れを断ち切ろうということで、これまでの手桶と洗面器は向こうで処分し、こちらで新しいものを買うことにした。どんなものを選べばいいか、なんとなくイメージはできていた。手桶と、洗面器、どちらの用途でも使えるような、具体的にいうとケロリンのサイズの、小ぶりな洗面器だ。あれが1個あればそれでいいのだ。というわけでそういうものを探す。すると、そんなこちらの意図を見事に汲み、さらにはその1歩先を行く、小ぶりな洗面器の外側の底面が段差になっていてグリップしやすい、というデザインのものが売られていて、感激して買った。
 感激して買ったが実際に使ってみたらぜんぜんダメだった、ということは一切なく、日々その感激を続けながら使っている。この話に起伏は一切ない。使いながら、常々「これは本当にいいものを買ったなあ」と思い、これについて日々の記録であるブログでまったく触れないのはおかしいだろうと思ったので、こうして書いた。

 去年の9月以来の「hophophop」、もとい「百年前日記」以外のブログ記事であった。去年のその時期のことを思い出し、なるほどそのタイミングか、などと思う。10月から「百年前日記」への収束が開始し、今日で本当にちょうど半年だ。なんかまあ、なるほどこの半年間は、「百年前日記」というブログがひとつあればそれでよかったし、それで精いっぱいだったよな、と思う。そして半年後の今日、なんとなくこうして「hophophop」を書いてみた。暮しの中に、「hophophop」で拾うような出来事もやっぱりあるだろうというような気がして、それで書いた。これから、妖怪たちに奪われた自分の体を取り戻すように、あのブログも、このブログも、ちょっとずつ復活させていければいいと思う。