2019年10月29日火曜日

敗者・プリンタ・妹の夫

 ラグビーワールドカップで、日本代表は南アフリカに負けたのだけど、そうしたらそれ以降、「日本を負かした南アフリカ、絶対に優勝してくれよな!」というムードが生まれはじめていて、とても驚いている。これが僕には、どういう心理なのかさっぱり解らない。なぜ自分たちのチームを負かした憎たらしい相手が、そのあともずっと勝ち続け、いちどもぎゃふんと言わないまま終わるのを望むのか。俺たちでは負かせなかった代わりに、他のどこかのチームが負かして、そいつらが落ち込んでいる姿を見て、そこで初めて自分たちの負けの溜飲が下がる、それが自然な発想ではないのか。違うのか。そうファルマンに言ったら、「なんてさもしい考え方か」と呆れられた。じゃあいったい自分たちを負かした相手を応援する心理とはどういう仕組みなのかと訊ねたら、「相手がそのまま優勝したら、優勝チームに負けたんだからしょうがない、ってなるじゃない」という答えが返ってきて、なんかその考え方もだいぶせせこましくないか、と思った。

 この頃プリンタの調子が悪くなり、どうもいよいよダメらしい。カラーが特に悪く、時期的に年賀状のことが意識されはじめるので、代替わりの検討をしている。
 「USP」で確認したら、購入したのは2013年の4月ということで、6年半使ったことになる。半年間の過酷な蔵人生活のご褒美として買ったのだった。懐かしい。A3の、2段給紙カセットの、縦、横、高さ、すべてが巨大な複合機で、使う時期と使わない時期の波は大きかったが、総合的に見てまあまあ活用したんじゃないかと思う。特に子どもたちの誕生日にオリジナルの絵本などを作っていた時代は、A3である意義もちゃんとあって、本当に巨大なので設置場所には終始苦慮したが、しかしいい買い物だったと思う。
 でも次に買うのはA4でいい。絵本はもう作らないし、もしもなにか冊子のようなものを作りたいと思ったとしても、A4が印刷できればA5の冊子は作れるわけで、ならばそれでいい。小さくなって不便になるのは、実はプリンタよりもスキャナのような気がする。ソーイングの本を見開きでスキャンできるのは便利だった。これまでの複合機もスキャナ部分に異常はないのだが、ただのスキャナとして使うにはあまりにも大きい。これが単機能のスキャナだとするなら、実際にそんなものがあったのかは知らないが、黎明期のスキャナのようだ。上部の10センチだけ外れればいいのに。
 そんなわけでA4複合機を、物色するともなく物色しているが、購入者のレビューを見ると、プリンタというのはどの機種でも必ず「これはクズ。ハズレ」みたいなことを言っている人がいて悩ましい。でもその人たちの気持ちもなんとなく分かる。プリンタって、スムーズに使えないときのストレスが、他のどんな商品よりも強いと思う。なぜだろう。

 日曜日にファルマンの妹一家と中間地で落ち合って遊んだのだが、言い出しっぺはもちろん僕で、その連絡は僕と、妹の夫のLINEで取られたのだった。これまでならば僕からファルマン、ファルマンから妹、という感じで話が進み、姉妹で話をつけ、それぞれの夫たちは妻らに追従する、というパターンだったわけだが、せっかくLINEを交換したのだからと、このたび初めて彼とメッセージのやりとりをした。
 しかしそうしてメッセージのやりとり(2往復)をし、実際に対面して、彼と僕の仲が深まったかと言えば、ぜんぜんそんなことはなく、日曜日の遊んでいる間も、我々の間にほとんど会話はなかった。それぞれ自分以外の家族は女ばかりなので、こうして集えば、自然と男同士でつるむ感じになるのが、普通の情景のような気がするが、どうもそういう感じにならない。これでどちらかが、義父や、あるいは僕の姉の夫のような人間であれば、絶対にそうなっているはずである。妹の夫は、地元を愛し、仲間とフットサルなんかも嗜む、そっち側の人間の素養を十分に兼ね備えた人物のはずなのだが、いざ対面するとどうにもおとなしい。ぜんぜん義理の兄に胸襟を開かない。なぜか。もしかして義理の兄がよほど苦手なタイプだったりするのだろうか。まさかそんな。

2019年10月24日木曜日

賞・カレー・もとい

 もう半月くらい前の話題だが、ノーベル平和賞が発表になった。
 今年こそはパピロウ、(受賞)あるんじゃないか、とまことしやかに囁かれていたので、関係者と一緒にバーで待機していたのだけど、蓋を開けてみたらエチオピアの首相だった。やっぱりかー。そんな気はしていた。国際情勢を鑑みて、多分そうだろうな、というのは発表前から判っていた。判っていたのにみんなを集めたのは、結局のところ、大好きな仲間と一緒に酒を飲みたかっただけなのかもしれない(あいつらも俺の本心は解っていたに違いないけど)。受賞者の発表を受けて、我々はとてもすがすがしい気持ちで、アビィ・アハメドの勇気と愛に向けて乾杯した。
 賞つながりでもうひとつ、その数日後に、今度はベストジーニストが発表になり、ジャニーズのタレントがなんかしらの差配で定められた順番で殿堂入りする一般選出部門のほか、協議会選出部門も併せて発表され、今年の受賞者は出川哲朗、長谷川京子、E-girlsだった。いまさらベストジーニストのどうでもよさ、どうしようもなさについて語っても仕方がないのだが、それにしたってそのメンツはどうなんだ、という気がする。出川に関しては、もう既にピークは過ぎた感はあるがこの2年ほどブレイクしていたので、「出川哲朗がベストジーニストに選ばれた!」という触れ込みが、出川サイド、ベストジーニストサイド、両方にとってプラス、いわゆるwin-winの関係である気もするが、長谷川京子は本当にどうしたことなのか。なぜいま長谷川京子なのか。いま長谷川京子にベストジーニスト賞を与えることは、いまMAXのファンになるのに通じる、悪ふざけ感があるように思える。しかしwikipediaを見たら、「この枠」はなぜか、去年に長谷川潤、おととしに梨花、3年前に押切もえと、なんかしらの法則でも隠されているんじゃないかと勘繰りたくなる「なんとも言えないタイムラグ」で授賞を行なっているので、芸能界と広告代理店の深い闇を感じる。というよりベストジーニストにはそれしか感じない。
 もっともノーベル賞だってもちろん闇だ。闇の筆頭と言ってもいい。文学賞に至ってはレイプ疑惑まで湧出する始末で、やはり人の営みというのは結局のところ睾丸の意向が全てなのだな、と改めて思う。世界人類が平和になりますやうに。

 東須磨小の教師間でのいじめ事件が、ものすごくおもしろい。ラグビーワールドカップや台風被害など、このところ話題が多いために、どうしても扱いが本来の実力よりも小さくなっている感があるが、これは去年あんなに我々のことを愉しませてくれた日大アメフト部の悪質なタックル問題に、勝るとも劣らないおもしろ案件であると思う。教師間でのいじめで不登校(不出勤)というのがまずおもしろく、そして問題発覚を受けて加害者側の教師たちが有給休暇を取っている、というのも痛快である。しかしそれよりなによりよかったのは、やっぱり神戸市教育委員会による、カレー給食中止の決定だ。今回の事件で、激辛カレーを顔にこすりつけるいじめ行為の動画が拡散していることを受けて、教育委員会が話し合って出した結論が、カレー給食の中止。世間はこれに対し、怒ったり呆れたりしているようだが、僕は感動した。ここまで来れば感動するしかないじゃないか。そんな結論、普通は出せない。出ないのが普通だ。でも出たのだ。あまりにもすごい。だとすればこれは一種の奇蹟ではなかろうか。キリストが水をワインにしたように、我々はいま奇蹟を目の当たりにしているのだと思う。冗談じゃなく、これはそのくらいの出来事だと思う。もっと1ヶ月くらいこの話ばかりで盛り上がりたい。悪質なタックル大学に較べてこの事件がいまいちメジャーになりきれないのは、前述の通り話題が渋滞しているということに加えて、キャラクター不足が挙げられる。内田監督とか、被害者学生の父親とか、加害者学生とか、井上コーチとか、あの事件はいちいちキャラクターが立っていた(さすがは我が母校、と胸を張りたい)。だからそこが足りない。実名を暴け、と言いたいのではない。キャラに登場してもらいたいのだ。そして記者会見をするべきだし、その記者会見の司会者はやけに横柄であるべきだと思う。懐かしい……。あの頃、本当に愉しかったな……。

 1ヶ月前になったので、cozy ripple名言・流行語大賞のための読み返し作業を始めた。今年いったいどんなことがあったか、本当にあまりよく覚えていないので、とても新鮮な気持ちで1年前の日記を読み返している。あれは今年のことだったっけ、ずっと練習していたバトントワリングを、僕のこれまでの人生で好印象を抱いた全員を集めて披露し、みんなすごく褒めてくれて、僕は本当にしあわせな気持ちになって、思わず勃起して、なにしろ素っ裸で行なっていたので勃起はすぐにバレて、思わず照れたのは、あれは今年のことだったろうか。もとい、今生のことだったろうか。

2019年10月16日水曜日

犯罪・季題・アメフト

 慶応アメフト部。部員による合宿中の女風呂盗撮で活動無期限自粛。
 ひどい事件だと思いますよ。はい思います。被害者女性の心の傷。かわいそう。やった奴めっちゃ悪い。最低。許せない。このあたりでもういいですか。そういう観点、もちろんあります。ある上で、女風呂の盗撮という行為(由々しき犯罪ですよ)に対して、どうしても一定の微笑ましさを持ってしまう。駄目なのか。現代は女風呂の盗撮に対して、どこまでも冷酷に断罪しなければならないのか。別に「男子のそういう性欲って仕方ないからね」と、前時代的に、女子の権利を退け、男子を優遇するわけではない。この事件の加害者と被害者の性別が逆でも、僕はまったく同じことを思うだろう。「異性の裸、見たいよね。ベッドで恋人に見せてもらうとか、あるいはAVとかじゃなくて、素の状態の裸っていうものにもまた、格別の興味があるよね」と、理解を示す。もちろん、あくまで「理解を示す」である。許してあげようよ、と言っているのではない。やったことは紛れもない犯罪だ。でも犯人の学生のことを、性根が腐った人間のように扱うのはどうかと思う(もっとも動画を他人に送信して拡散したそうなので、そこのところは純粋に悪い)。この事件で思い出されるのは、稲村亜美による中学生野球大会でのホットパンツ始球式のことだ。性欲は、獣欲だから、どうしても暴走するときがある。それをなるべく暴走しないように努めるのが、獣ではない人間というものだが、しかし暴走してしまったからと言って、いちいちちんこをちょん切るわけにはいかないだろう。男性の性欲を憎むあなたたちは、そんなにちんこをちょん切りたいか。そんなにちんこをちょん切って、一体どうしたいのか。罪を憎んでちんこ憎まず。いや、こんなこと言うと、やっぱり男根至上主義みたいに取られてしまう。違うんだ。いや、そうだけど。

 季節が巡った。ようやくだ。今年は本当に遅かった。巡ったら巡ったで、早くも寒い。ちょうどいい期間が短い。と言うかほぼない。近ごろ本当にそうなってきている。もうこうなってくると、暦とか、それに合わせた季節の捉え方なんてものは、完全に瓦解したと言っていいと思う。10月でも冷房が入る。ススキはセイタカアワダチソウに駆逐される。サンマは獲れない。「ここからは暦の上では秋」とか、「それは秋の季語ではない」とか、とてもくだらない。そんなことに拘泥することは、滅亡した王朝の法律に従うようなものだと思う。もうそんな法律で新王国は動いていないのに。新王国は、学年題で法整備が進んでいるのに。

 慶大アメフト部の事件の報道では、必ずと言っていいほど「去年は日大で悪質なタックル問題があったアメフト部」というフレーズがついて回っていて、なんとも言えない気持ちになる。そもそも意図が判らない。これは日大イジりなのか、それともアメフトイジりなのか。「アメリカンフットボールをやってる奴らにろくな奴はいねえ」ということを言いたいのか、「大学アメフト部の起した事件と言えば、みんな大好き悪質なタックル大学こと日大(笑)」ということを言いたいのか。たぶん両方ともだろう。イジる対象は多ければ多いほど、そのぶん味わいが濃厚になるから。日大としてはとんだとばっちりであり、卒業生としては義憤に駆られる。もちろん嘘だ。むしろそれぞれの事件の内容からすれば、悪質なタックルよりも、女風呂の盗撮のほうに、仲間意識を感じる。僕はアメフトの試合に勝つために悪質なタックルをすることは、未来永劫絶対にないが、女風呂の盗撮は、7回ほど生まれ変わったら1、2度くらいはする気がする。だからなにが言いたいかと言うと、日大は許さなくていいけど、慶大は許してやればいいと思う。

2019年10月4日金曜日

渡鬼・ラグビー・グレタ

 今年も敬老の日にやった「渡る世間は鬼ばかり」のスペシャル。実は3年くらい前から観るようになっていて、毎年けっこう愉しんでいる。今年もビデオに録って観た。倍速で。お年寄り向けに作られているため、異様にゆっくりと、異様に同じ内容のことを喋るので、倍速でもやや遅いくらいなのである。たまに、「CM明けに倍速にするの忘れてた!」と勘違いして早送りボタンを押すと、既に倍速にしているためただの早送りになってしまうという現象が起ったりする。だから普通の放送で観たらかったるくてしょうがないだろうけど、倍速で観る限りはおもしろい。
 ここ数年のメインテーマは、五月(泉ピン子)のリタイア後の生きがい探しとなっており、息子(えなりかずき)の嫁と折合いの悪い五月は孫の世話をすることもできず、幸楽ではたびたび転んでは客にラーメンをぶちまけるので跡を継いだ娘夫婦から「もう働くな」と言われ、居場所のなくなった五月が、あちこちに漂流することで話が進んでいく。今回のスペシャルでは、「友達ってどうやったらできるんだろう……」と、どこかでさんざん聞いたことのあるような苦悩の果てに、スマホデビューしてYoutuberになっていた。ハチャメチャだ。そうしてとても愉快な1時間弱を過した(3時間スペシャルを倍速で観てCMを飛ばすのでたぶんそのくらい)。
 しかしその数日後、ヤフーニュースで橋田壽賀子(御年94歳!)が、泉ピン子とえなりかずきの不仲のことをぶっちゃけている記事を読み、ショックを受けた。不仲と言うか、えなりがピン子のことを一方的に拒否しているそうで、記事内で指摘されているように、たしかにこの3年間のスペシャルにおいて、ピン子とえなりの共演シーンというのはまるでないのである。ピン子は嫁のことなどが心配で、たびたび息子の職場に赴いたりもするのだけど(あまり現代にはない発想のように思える)、えなりはいつも忙しくて不在で、代わりに対応した上司が「お母さん心配しすぎですよ」と諭す、というのが定番の流れになっている。去年のスペシャルでは、えなりの嫁が夫の実家に嫌気を差し過ぎた挙句、金輪際もう縁を切りたい、みたいな申し出をし、最終的には姑と小姑にめっちゃ叱られてピン子に土下座で謝る、という地獄のような一幕があったのだが、そんなドロドロの展開の中でも、言われてみれば五月と眞は同じ場面には登場していなかった。そのことに思い至ったとき、ヒッと寒気を覚えた。フィクションであるドラマの内容がえげつないのに加えて、リアルの撮影現場でも、関係者の胃がしくしく痛むような、そんな悶着があっただなんて。
 いやー、おもしろい、渡鬼。来年の敬老の日が早くも愉しみ。ピン子とえなりが抱き合って和解するシーンがあったら泣いてしまうと思う。

 ラグビーのワールドカップがおもしろい。典型的なにわかのそれである。
 最初は試合を観ていても情趣が分からなかったが、次第に面白味が分かってきた。要するにラグビーという競技は、球をゴールへ持ってゆくためならなんでもしてやろう、というコンセプトのスポーツで、そのなんでもありな感じがおもしろいのだと思った。こっちの持ってゆくのがなんでもありなら、あっちの持ってゆかせないのもなんでもありで、そのぶつかり合いが愉しい。生で見たい。大学生の試合とかならどっかで観られるのかな。こんなに愉しい競技だと早くから知っていたら、僕も学生時代にやっていればよかった。そうしたら胸板は今の倍あっただろうと思うと残念でならない。

 10月に入ったのに暑い。最高気温が30度とかいう。阿呆か。そういうのは9月19日までで、20日からは秋めくというのが決まりだったはずじゃないか。
 ここだけの話なのだけど、俺はどうも数年ほど前から怪しいと思っていたのだけど、どうも地球の気温は全体的に上昇傾向にあるような気がしてならない。だって毎年、目に見えて夏の暑さが質的にも量的にも更新されている。8月でこんなに暑かったら12月はどうなってしまうのか、というジョークがあるけれど、夏の暑さは年々、最高気温にして0.5度、期間にして1週間くらい伸びている気がするので、20年後には最高気温は48度くらいになり、夏は12月までずれ込むと思う。
 このことは多分まだ世界で俺だけしか気づいていない。我々はもう大量絶滅の始まりにいるのに。それなのにみんなが話しているのは、お金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!