2018年7月4日水曜日

一過・妖精・僕杉

 おとといあたりから気持ちが沈んでいて、自分に友達がいない哀しみなどを中心に、やけに落ち込んでいたのだけど、今日の昼、台風一過の空の下、久しぶりに散歩をしたら、一気に気持ちが晴れた。歩きながら、そう言えばピイガがちょっと体調が悪そうで、幼稚園を休むかもしれないと言っていたな、と思い出し、ファルマンに電話を掛けたら、ピイガは普通に登園して普通に帰ってきていた(ちょうど午前で終わりの日だったからよかった)。ついでにその電話で、気持ちが晴れたことを伝えたら、「それって低気圧が原因だったんじゃない?」と言われ、それまでなぜかその考えがまるで思い浮かばなかったのだけど、落ち込んだタイミングも回復したタイミングも、まさにそれしか考えられず、なるほど、なーんだ、となった。我々は、脳を通してしか世界が見られないから仕方ないことではあるけれど、その時々でとても深刻な苦悩を抱えているつもりになっても、結局は気圧のせいで脳がちょっと物理的にどうにかなっているだけだったりする。そう考えたら逆に、脳さえハッピーなら世界中がハッピーなわけで、そういうクスリがあればいいのになあ……。

 TikTokというジャンルを知り、なんだか衝撃を受けた。これまでも次々出てくる若者文化に対して、それなりに衝撃を受けながら生きてきたけれど、なんかもう僕と若者文化との乖離は来るところまで来たな、とこれを知って感じた。女子高生が中心になってやっているから、まあその関係でその存在を知ることになったのだけど、ただでさえ得体の知れない存在であった女子高生というもの(なにしろ僕は男子校出身であり、振り返ってみれば生身の女子高生とはあまり縁のない半生を送ってきたのである。そのせいかいつまでも火が燻ぶり続けるように女子高生を追い求め、結果的に女子高生成分が濃密な半生を送ってきたような錯覚さえ抱いていたが、よく考えてみたらやっぱり女子高生と現実に絡んだことはほぼない!)が、今回のTikTokによって本当に遠いものになった。伝説を信じて森を探求した結果、草むらの一角に妖精たちの遊び場を発見したが、その妖精たちの遊びと言えば、葉っぱを指で叩いてケラケラ笑うみたいな、なんか本当にもう、君たちは一体それのなにが愉しいの? その遊びの情趣はなんなの? おじさんに教えてよ! と思わずいいたくなるほど退屈、みたいな、そんな感じ。もはや女子高生は妖精的な存在になった。

 ヒップホップダンスの教本を借りた、ということを前に書いた。それで練習に励んでいるかと言えばそんなことはなく、ただステップを説明する連続写真を眺めているだけで、ぜんぜん体は動かしていない。しょうがないじゃないか。仕事を終えて帰って、子どもたちも寝ついた夜半に、ヒップホップダンスを練習できるか。できないだろ。そんなわけで、これもバトンと同じで、昼休みに会社で練習したらいいのではないかとファルマンに相談したら、「それはやめとけ。ヒップホップダンスはやばい」みたいなことを言われて、なぜバトンはよくてヒップホップダンスはダメなんだ、わっかんねーよ! とまた僕の中の杉村が発動した。世の中、僕の中の杉村なことだらけだ(わからないことだらけの意)。もっともヒップホップダンスに対して、ヒップホップダンスじゃないんじゃないか? という猜疑心を抱きつつもある。バトンと組み合わせて芸になるかどうかというレベルの話ではなく、僕にこの、中学生くらいの少年少女が、飛ぶがごとく踊っているこれは、ぜってえできねえんじゃねえかと、ちょっとべらんめえ口調になってしまうほどに、感じているのだった。そんなわけで次なるターゲットの教本を図書館で予約する。次は太極拳だ!