2018年7月22日日曜日

断酒・耳栓・興醒め

 柄にもなく、酒を飲まずにいた。この場合の柄というのは、人柄というのもあるし、もちろん季節柄というのもある。だってビールが美味しい季節じゃあないか。毎日35℃超え。1日の最後にビールを飲まなきゃやってらんない。そんな時候だというのに、今週は酒を飲まずにいたのである。なぜか。3連休明けの、火曜日から始まる1週間に調子が狂い、なんとなく気だるさを感じた瞬間に、「今日は休肝日にしようかなあ……」と呟いたら、ファルマンがここぞとばかりに喰いついてきて、休肝日と言わずあなたはもうちょっと酒を飲まないべきだ、気だるいのは肝臓がアルコールの処理で疲れ果てているからだ、と矢継ぎ早に責め立てられ、気付けば「酒は週末だけ」というルールができあがっていたのである。火曜日水曜日あたりは「そ、そんなことが許されるのか……? お、俺の身体に?」と戸惑いが隠せなかったが、木曜日金曜日には「まあそんなものかもしれないな」という気持ちになっていた。そうして肝臓を数日間休ませて、劇的に体が楽になったとか、明らかに顔色が良くなった、ということがあればよかったのだが、もちろんそんなことはない。思えば毎日のアルコールで肝臓が疲れているから気だるいのだ、というのは詭弁で、連日35℃超えなのだから誰もが気だるいのは当然なのである。なんか暑さのドサクサで騙されたような気がしてきた。
 とは言え晩酌をしないことで、毎夜1時間弱の時間が生まれたし、晩酌のときに僕はわりと麺類を食べたりしていたので、もちろん腹周り的にもいいに違いない。ともすれば来週も続けようと思う。週末は飲むけど。張り切って飲むけど。

 先日「おこめとおふろ」にちらっと書いた耳栓を、本当に買った。1500円ほどする、ちゃんとしたやつである。本当に、子どもが家で哀しくなるほどうるさくて、鼓膜が、鼓膜なのに悲鳴を上げるので、買わざるを得なくなった。それで届いたものを着けて暮している。もちろん聴覚を完全に遮断するわけではなくて、あらゆる音を少しトーンダウンさせる感じである。装着時はまだちょっと違和感があるのだけど、そのうち慣れるだろうと思う。それで家ではもちろんのこと、仕事中でもたまに着けている。仕事場も機械の音やエアコンの音が恒常的にうるさいので、必要だと思った。しかしそういう音から耳がガードできる一方で、人から話しかけられたときに聞き取れなかったらどうしようという不安感が常につきまとうので、けっこう気を張ってしまい、これでは耳が疲れるか神経が疲れるかの違いだな、とも思った。そしてこう書いていて思ったが、耳の疲れだの神経の疲れだのと、どうにかして疲れの正体を突きとめ、それをなんとかしようとしたところで、ひとつ目の話題と結論が被るが、どうしたって暑さで絶対的に全身がヘロヘロなのだから、なんかもうどうしようもないな、という気もする。暑さでもうこの2ヶ月はどうしたってどうしようもないのに、アルコールを断ったり、耳栓を買ったりする俺、愛しい。生きるのにまじめ。

 そんな大変に暑い真夏に開催される予定のキャンプについてなのだが、僕がしおりを作ると言ったら、ポルガも「ポルガもつくる」と張り切りはじめ、しかししおりというものがどういうものかあまり理解していなかったため、とにかく来たるべきキャンプへの思いの丈をぶちまける内容の誌面を延々と紡ぎ、なんか最終的にそれは50ページ近くになっていた。最後のほうはページ数を増やすための手抜きがひどいのだが、前半部はなかなかにおもしろく、そのうちスキャンして公開しようと思っている。そして我々がそういうことをしているということが、ファルマン経由で耳に入り、キャンプの企画者である義父もなにかが触発されたらしく、エクセルで今回のキャンプの概容についてまとめたものを送ってきた。これはいかにも人生の途中でパソコンに遭遇したおっさんが作ったエクセルファイルだなあ、という垢抜けない感じのもので、たぶんふたつあるコテージの部屋割を提案することが当初の目的だったのだろうが、それだけだとエクセルにする意味がないと感じたのか、バーベキューで用意する食材の分量であるとか、今回のキャンプに掛かる費用であるとか(それはあなたが黙って払えばいいのだから知らせる必要がない)、そういうものまで記載されていた。僕はそれをファルマンのパソコンの画面で見て、そのときはもう自分のキャンプのしおりを作り終えていたこともあり、「……なんか、人がこうして張り切ってるのを見ると、すごく醒めるね」と呟いた。なんか、やけに白けた気持ちになったのである。そうしたらファルマンが、「そんなこと言ったら私はそれを、夫からも娘からも父からもされてるんだからね」と言った。本当だ。つらたんじゃん。