2019年12月3日火曜日

流行語・時代・生まれ変わり

 ユーキャンのほうの流行語大賞が発表になる。大賞は大方の予想通り「ONE TEAM」だった。しかし受賞式にラグビー日本代表の選手たちが現れないのは意外だった。わりとサクサクとバラエティー番組に出ているので、けっこう気軽な人たちなのだと思っていた。賞を受け取ったのはラグビー協会の会長だという、初見のおっさんで、なんかこの形になるまでに各所でいろんな話し合いが持たれたのだろうなあ、と思った。僕がノミネート語発表の際の記事で唱えた、去年の大賞でカーリングの選手たちが登壇したので、2年連続でスポーツチームの面々というのはいかがなものか、という面も考慮されただろうか。されるはずないわな。本当に流行語大賞に選ばれた言葉というのは、ギャグに限らず、1年できれいさっぱり忘れ去られるものだ。もう誰も「そだねー」なんて覚えていないし、さらに言えばカーリングという競技そのものもすっかり忘れただろう。そして1年後には、もうラグビーなんてスポーツは誰の頭の片隅にもなくなっているはずだ。
 それにしても大賞のラグビーがそんなだったし、渋野日向子も現れず、「令和」で菅官房長官が来ることもなく、今年は芸人のギャグはノミネートがそもそもなく、「闇営業」で受賞をしたのは宮迫でも入江でもなくFRIDAYの編集長で、選考委員特別賞というけったいな扱いとなったイチローも来るはずがなく、登壇した面々の中でかろうじていちばん喋れそうなのが練馬のスーパーの社長というのは、なかなかどうしようもない受賞式だと思った。来年は芸人のギャグが流行るといいよね。できればコウテイの「ズィーヤ!」がいいな。

 車に自動ブレーキ機能を付けるのが義務化されるらしい。新しく買う車はもちろんのこと、既存の車にも後付けすることになるらしい。詳しくは知らないけど。
 そのニュースを知って思ったのは、「それまでの時代」と「これからの時代」のことだ。これからの時代、日本で販売されるすべての車に自動ブレーキ機能が付くのだとしたら、わりとすぐに、車はいざというときには自動でブレーキが掛かるもの、という認識になることだろう。そしてそれが普通になった世界で、人々はそれまでの時代の無茶苦茶さに驚愕する。「なんと、かつて車には自動ブレーキ機能がなかったんです!」「ええーー!?」という会話が繰り広げられる。そのため老人の運転する車が事故を起しまくり、ずいぶんな数の人が命を落としたというエピソードを聞いて、「む、昔のやること……」となる。我々はそんな風に、麻酔せずに外科手術が行なわれていた、みたいな時代と、同列に扱われる時代に、これまで生きていたのだ。前に読んだエッセイで、「飛行機に乗客全員分のパラシュートを搭載していないのが信じられない。きっと未来人はそれを知って大いに笑うはずだ」という文があった。これはそれだ。

 ピイガがポルガに、
「脳ってなに?」
 と訊ね(その質問もどういうことだ、という話だが)、それに対してポルガは、
「全てであり、無である」
 と答えたらしい。
 台所に立つファルマンが、そのやりとりを目撃したのだった。
 うちの子はいったいなんの生まれ変わりなのだろうか。