2018年8月16日木曜日

300・筋力・いたずら

 今回の帰省で、次女夫婦と三女と、LINEを登録する。しかし僕がタブレットを持ったことは、キャンプなどを通して認識しているはずなのに、向こうからLINEの登録をせがんでこないのはなぜだろうと思った。仕方なくこちらから、画面にQRコードを表示させ、提示してやった。シャイなのか。自分とお義兄さんでは釣り合わないとでも思ったか。そんなことを気にする必要なんてない。たしかに釣り合うか釣り合わないかで言えば釣り合わない。三女と交換した際、「ちなみに君は登録している友達は何人なの」と訊ねたら、「314人」という答えが返ってきて、それに対して僕は交換前(次女夫婦とは既に交換して)14人だったので、そこにはちょうど300人の開きがあった。300人以上が登録されている三女のガバガバLINEと、一個のラグビーチームほどの僕の純潔LINEでは、登録すること、されることの価値がまるで違うのは言うまでもない。でもそんなことに引け目は感じなくたっていい。僕は広い心で受け入れてやる。かくして友達15人。また親戚か。

 近ごろ自覚症状が出るほどに、筋力が落ちている。特に背筋だ。背筋が落ちたせいで、自然と猫背になってしまっている。加齢で筋力が落ちての猫背って、本当に救いがない。元から猫背というのとは違う、本格的なダメさがある。このまま放置していたら、背が丸まった分、腹が圧迫され、圧迫された腹部は贅肉を前に押し出し、そうして中年太りが出来上がるのだ。中年太りは、代謝からも骨格からも要因が襲い掛かってくるのだと知った。なぜ加齢はそんなにも我々の腹を突き出したがるのか。どういう狙いがあるのか。向こうに確たるメリットがあるとは思えず、それゆえにタチが悪いと思う。なんとなく遊び感覚で責められるのが、いちばん絶望感がある。
 流れを食い止めるために、筋トレを試みることにした。腹筋は最近になってあの、仰向けに寝た姿勢から上半身を起き上がらせるあれよりも、肘で腕立て伏せの姿勢のままキープするやつのほうがよほど効果的だ、なんてことが言われ出したので、背筋にもそういうのがあるんじゃないのかと検索したら、意外となかった。それで仕方なく、ちゃんといたわってやらないとちんこが痛くなる、あのうつ伏せで上半身を反らせるあれをやった。何年ぶりか、というくらいに久しぶりにやった。そうしたら上半身が、自分でもびっくりするくらい持ち上がらなくて仰天した。精いっぱい頑張っても、ほんの一瞬、6センチくらいしか上がらないのだ。あまりにも上げられなすぎだろう、とさすがに自分でも思った。あまりに上がらないので、そもそもトレーニングにあまりならない。筋力がなさすぎて、筋肉を刺激するための負荷が与えられないのである。なんという現象だろうか。春先にランニングを目論んだとき、外に出たら風が冷たく、しかし走っているうちに体があったまるだろうと思っていたら、体があったまるよりも先に息が上がってしまい、体をあたためられなかった、ということがあった。どちらも世の中的に珍しい現象であるだろうに、「僕のトレーニング」という狭い分野で立て続けに事例が報告されて、こんなの奇蹟的だ、と専門家も舌を巻いている。

 ひとり暮しの最後のあたり、突如として自宅のブルーレイレコーダーが、なにもボタンを押していないのに勝手にディスクトレイを開示してくる、という出来事が起った。何度電源をオフにしてもひとりでにオンになり、吐き出してきて、こちらが閉じる操作をしたら引っ込むものの、またすぐに出してくるし、仕方なく無視していたらそのうちあきらめて引っ込め、しかしやがてまた出してくるという、その繰り返しだった。仕事に出ていた日中、エアコンが入ることもないので、暑さにやられたのだろうとそのときは思い、そのうち自然と直ればいいなあとあまり深く考えずにいた。そして実際、帰省から戻ってきたら、その現象は収まっていて、一件落着したのだけど、いまになって振り返ってみたら、夏場のひとり暮しのときに起ったその現象って、怖がろうと思えばもっとどこまでも怖がれた。電源をオフにしても勝手にオンになるくだりなんて、なんかしらの意思、いたずら心のようなものが感じ取れる(ちょうどその前に「平成狸合戦ぽんぽこ」を僕は観ていた)。でもそのときその恐怖にどっぷり浸ってしまったら本当にドツボに嵌まっていたと思うので、無意識の自助作用として、あまり深刻視しないようにしていたんだと思う。よくできている。