2025年3月2日日曜日

坊さん・猫背・おろち

 ファルマンが去年に亡くなったおばあさんの一周忌法要に行った。葬儀以降、四十九日も今回も、わが家からはファルマンだけの参加という形で済ませてもらっている。
 帰宅したファルマンは、こういうことのあとはたぶん誰でもそうなるものだと思うが、現行の方式について大いに義憤に駆られ、しばらくぼやいていた。すなわち、仏教および坊さんの、ボロい商売に関してである。田舎ということも大いに関係しているものと思われるが、坊さんの立ち位置というのはやけに高く、迎え入れる側はへりくだり、敬った扱いをしなければならないことになっている。おかしな話だ。こっちが依頼し、代金を払う側である。売り手と買い手は対等でなければならないという建前もあるけれど、そうは言っても往々にして買い手のほうが立場は上のものであろう。それだのに、こと仏教に関してはそれが完全に逆転している。なぜならそれは宗教であって商売ではないからだ、と反論するには、現代のそれはあまりにもただの商売すぎると思う。百歩譲って、坊さんが本当にストイックで、欲にまみれた現世から逸脱した存在であれば、まだ許せる気もする。しかし今日の、というかいつもその人なのだが、その坊さんは用意されたご馳走を気ままに食べ、場の誰よりも酒を飲んで愉しそうにしていたという。そして主催者である両親はもちろん、ファルマンをはじめとして参加者は、皆いくばくかの金銭を拠出しているわけだが、彼だけは逆に大金をもらって気持ちよく帰るのだ。こんな不条理があっていいのだろうか。ファルマンによると、今日の坊さんは袈裟の着方もだらしなくて、合わせから肌着が覗いていたのでイライラしたという。坊主憎けりゃヒートテックまで憎い。
 もっともこんな阿漕な商売が成り立つのも、せいぜいこの世代までだろう。仏教に限った話ではないが、氷河期世代はこんなことに絶対にお金を使わない。バカみたいな呪文を唱えて豪華な飯を喰って酒を飲むことだけしかできない無能者は、生活が立ち行かなくなり、元坊主による犯罪が社会問題化するだろうと思う。

 日々せっせと筋トレをしているので、ボディメイクと言うと少し面映ゆいけれど、まあ鏡で身体を眺めるじゃないですか。そうすると、ああちょっと胸筋が盛り上がってきたなあとか、こうやって力を入れると腹筋に線が出るじゃないかとか、いろいろ思ったりするのだけど、そのときどうしても目に入ってしまうのが、へその位置と、その7cmくらい上に走る、2本の線だ。思えばだいぶ昔からある。たぶんティーンの頃からある。太っているわけではないのだが、腹の肉というものは、どうしたってどこかで段になるものだろう。それがだいぶくっきりと、跡のようになってしまっているのだった。
 ネットで検索してみたところ、「猫背線」というのだそうで、ほうれい線などと較べて、とても親切なネーミングであると思った。名称が、その要因を説明してくれているのだ。こんなのだいぶ珍しいパターンなのではないかと思った。
 猫背ということに関しては、それはまあ弁明の余地はなく、それどころか僕の場合、「常に体が傾いている」といろんな人から指摘されるほどに、なんか姿勢はよくないのだ。それはもう子どもの頃からなので、仕方がないと半ばあきらめていたし、むしろ西野カナが「あなたの好きなところ」で唄ったように、「少し猫背な後ろ姿 すぐわかる歩き方」というやつで、俺の5億あるチャームポイントのひとつくらいに捉えていた。しかしここへ来て、根深い猫背線というコンプレックスへと結実してしまい、戸惑っている。
 猫背線の解消法は姿勢を良くすることだそうで、それを知って以来、少し意識しようとは思っているのだけど、しかし四半世紀も刻まれ続けた猫背線が、代謝も緩くなったであろうこの年齢になって、果たして解消する目算があるのかしら、とも思う。あとミシンやアイロンなどの手作業って、どうしたって前傾姿勢にならざるを得ないわけで、やはり無理ゲーなんじゃないのかな、とも思う。西野カナが猫背線のことを唄ってくれないだろうか。

 2月中は、降雪に加え、冬営業で20時閉館だったこともあり、結局おろち湯ったり館に行かずじまいだった。なにしろプールにありつけていないので、行きたい意欲はあるのだ。湯ったり館とはいちど別れたくせに、必要に迫られたら臆面もなくヨリを戻そうとする。我ながら都合のいい男だと思う。
 たぶんあと半月もすれば、閉ざされていた2階も開放されることだろう。桜の気配も強まるし、湯ったり館に行くには最適なシーズンがやってくる。
 というわけでホームページを久しぶりに開いたら、「料金改定のお知らせ」ということで、これまで520円だった一般料金が、4月からは600円になるという。去年のサウナマットの件から悪い知らせが続いていて、残念だな、とも思うが、今までが安すぎたし、時世的にも仕方ないよな、とも思う。もとい、サウナもプールもあって600円というのは、それでも世間よりだいぶ安いに違いない。出雲市佐田町にあった「ゆかり館」という温泉施設は、いちども行ったことがなかったけれど、休業が続いていた昨年、経営者がいなくなって施設が差し押さえられたそうで、別れた相手ではあるが、湯ったり館はどうかそんなことにはならず、いつまでも元気でいてほしいので、経営状況がうまいこといけばいいと切に思う。
 520円の間に、いちどくらい行こうと思っている。