わが家では半月ほど前に衣替えがなされ、トレーナーやカーディガンの段だったものが、Tシャツの段になった。毎年のことながら、衣替えというものは、暑さ寒さへの対応というのはもちろんだけど、半年ほど着続けた服に対するうんざり感からの解放という意味で、ありがたいと思う。半袖のTシャツの清々しさ! と今は感動しているが、ただしこれも半年後には飽き飽きしているのだ。
ところでそのTシャツに関して、少し驚く出来事が起っている。
着てみると、小さいのだ。
何年か前、Tシャツをやけに蒐集した年というのがあって、僕のTシャツラインナップというのは今もだいたいその頃のレガシーでできているのだけど、その当時、傾向としてわりと小さめのものを着ていたこともあり、今年いよいよ「着たらちょっと変」なレベルにまで小さく感じられるようになってしまった。
太った、という話ではない。体重はほぼ増えていない。そうではなくて、数年間の筋トレおよび水泳によって、いよいよ胸周りが大きくなったのだ。だからそのあたりがパツッとしている。パツパツとまではいかないが、ちょっと強調しすぎだな、という印象を受ける。なによりこれを着て1日過したら、動きづらくて肩が凝りそうだと思う。
体型がよくなったことは、目指していたことなので嬉しい。しかしTシャツの選択肢はだいぶ減ってしまった。参っぜ! そうか、発育のいい成長期の女子って、こんな気持ちなのか。誇らしいけど、照れ臭い。参っぜ!
ポルガがよく食べる。たぶん人生でいちばんよく食べる時期なのだろう。
夕飯時にごはんを大盛で2杯食べたあと、夜食でもう1杯食べたりする。びっくりする。僕なんか、そもそもの1杯が、ポルガの最初の1杯の7割くらいだ。それでもう十分。
やはりなにが違うって、代謝が違うのだろう。若者は、たくさん食べて、たくさんエネルギーを放出するのだ。それって本当にすばらしいことではないか。そうやって空気中に放出されたエネルギーは、世界そのものを活気づけそうだと思う。
だとすれば僕は、若者が多い国で暮したい。超高齢化の、人口減少社会はやだ!
そう考えて、子どもが巣立ったあとの夫婦が小型犬を飼ったりする理屈がようやく解った。身近に、なにかパワフルな、爆裂なものを置きたいのだ。ファルマンの実家の犬は、しつけがぜんぜんできていなくて、あんな厄介なものがいると生活がままならないだろうと思っていたが、あの感じのものが家にいることで救われる心の部分があるのだろうな。
山陽と山陰を繋ぐ特急電車やくもの、新型車両が走行を開始した。ちなみに開始したのはちょうど、われわれが車で岡山に行った日である。
新型車両の話になると地元民がすぐ訊ねるのが、「揺れはどうなのか」で、そのくらい中国山地を突き抜けるやくもというのは揺れる乗り物なのであった。やくものことを「はくも」(酔って吐き気を催すから)、さらにはもう少し前に、今回ほど大々的にではなく車両がリニューアルされた際、ゆったりやくも、というコピーが付けられたのだが、それのことを「ぐったりはくも」と呼ぶのが地元民のトレンドであった。
それでこのたびの新型やくもだが、ちょうど乗ってきた車両がそれだった(6月くらいに全てが新型に切り替わるそうだが、今はまだ混在していて、選択できるわけでもないらしい)という、関西から来た仕事関係の人の話によると、「ぜんぜんちがう」らしい。この人は定期的に来る人であり、そのたびにやくもを利用してきたわけで、話に信憑性がある。
「俺はいつも揺れがいちばん激しいときに小便に行くんだけど、これまでは安定せずに大変だったのが、新型だと難なくできた」
というエピソードに、へえ、と感心した。どうやら今度こそ、やくもはそこまで揺れなくなったのかもしれない。いちどくらい乗ってみたいものだ、でも地元民がやくもを使うシチュエーションってほとんどないんだよなー、などと思った。
違和感に気付いたのは帰宅後だ。
「いつも揺れがいちばん激しいときに小便に行く」ってなんだよ。