2024年1月12日金曜日

大谷のグローブ・トップバリューの鈴カステラ・傷だらけのファルマン

 大谷翔平が、全国のすべての小学校にグローブを配ったじゃないか。大谷なのか、ミズノなのか、実際のお金の出どころは知らないけれど。
 そのニュースを見ていて思ったが、この全国のすべての小学校に配るやつって、大谷翔平は約2万あるという小学校に、送っていいですかとお伺いを立てて、いいですよという返事をもらったから送るわけではたぶんなくて、ちょっと乱暴な言い方になるが、勝手に送り付けているんだろう。そうしたら、あの、アメリカで、アメリカ人たちをヒーヒー言わせてる、自国民の誇りである大谷翔平が、子どもたちに笑顔を届けたいという純粋な思いから、都会とか、私立とか、そういう分け隔てなく、直々にグローブをくださるぞと、約2万人の校長は押し並べて喜び(校長をやっている世代のおじさんは野球が好きな確率がとても高いに違いない)、あるとき大谷翔平の名前で届けられたその荷物に、欣喜雀躍し、何人かの校長は嬉ションさえして、すぐさま全校児童を集めると、まるで自分と大谷翔平に特別なパイプがあるかのごとく、よってまるでそれが自分の手柄であるかのごとく、うやうやしくそのグローブをお披露目し、内心では児童らに、水戸黄門の印籠のようにかしずいてもらいたいとさえ思いながら、校長としての矜持がギンギンにみなぎる(これを「校長勃起」と呼ぶ)のを感じ、悦に入るのである。つまりみんなハッピー。誰もこの一連の流れに疑問を持っていない。
 でも大谷翔平のグローブがいいのなら、どうしてこれはダメなんですか、という展開だってあり得るだろう。たとえば、世界で活躍したという意味では、とにかく明るい安村が、あのビキニパンツを送ったらどうなのか。それはちょっと、と断るのか。なんでだ。なんで大谷翔平のグローブはよくて、安村のビキニはダメなのか。その線引きはなんなのか。
 本当は、なんなのかは、解っている。一言では言えないけれど、大人なので理解している。でも大谷翔平のグローブだけが諸手を挙げて受け入れられている情景が、性分的になんとなく落ち着かなく、駄々をこねたくなった次第である。
 安村のそれは完全にアウトだけど、きわどいところでは、SHELLYがコンドームを配るというのはどうだろう。校長らは全校集会で溌溂と紹介するだろうか。

 イオンのトップバリューの鈴カステラが復活した。
 もうなくなって久しかった(「店頭からなくなった」という記述をしたのが去年の1月のことだった)が、イオンに行くたびに棚を確認するのは怠らずにいた。そうしたら去年の暮れに、しれっと並んでいるのを見つけ、大慌てで3袋買った。
 イオンのこれがなくて、2023年はどうしていたかと言えば、トップバリューではない、別のスーパーで扱っている均一菓子のシリーズにその存在を見出し、それはインターネットで買ったさっくりタイプの鈴カステラにショックを受けて傷心だった僕を、それなりに慰めてくれる食感であったので、ひたすらそれで糊口をしのいでいた。だから大いに感謝をしなければいけない。いけないのだけど、イオンのそれをひとつ食べてみたらどうよ、約1年ぶりのそれに、塞がっていたチャクラが再び開いたような感動があった。ぜんぜん別物、別次元の食べ物だった。1年間僕が食べていたのは、鈴カステラの形をした、小麦粉と卵と砂糖のお菓子だったんだな、と思った。それくらいおいしい。超しっとり。最高。
 あまりにも嬉しかったので、家族思いの僕は、家族にもこのしあわせをお裾分けしてやろうと、おやつの時間にそれを振る舞ってやることにした。しかしながらなんたることか、家族は誰も芳しい反応を示さないのである。ファルマンとピイガはひとつ食べて「うん」とだけ言い、ポルガに至っては食いさえしない。せっかくのしあわせのお裾分けを、こんなに無碍にする奴らがあるか。あるのだ。家族なのだ。考えられない。もういい。金輪際ひとつもやらん。ぜんぶひとりで食べる。実際3袋はすぐになくなり、もう追加で買った。今後も安定的に販売してくれますように、と願ってやまない。

 新しい1年が始まり、ファルマンが日記をつけ始めた。
 ファルマンの日記再開は、この数年で3回くらいあり、そしてわりとすぐに頓挫していたので、こちらも学習して、軌道に乗るまでそこまで反応しないようにしようと思っていた。しかし当たり障りのない記事が3つくらい投稿されたあと、次に投稿されたのは、「去年の後半にファルマンが大いにハマった韓国ドラマの名シーンを短歌にしたもの」で、これがすごくよかった。短歌の質がよかったとかではない。そんな視点では見ていない。じゃあなにかと言えば、それはやっぱり「痛々しさ」という言葉になってしまう。どうしたって出身大学が出身大学なので、痛々しさが身上みたいなところがあり、韓国ドラマにハマって、その短歌を詠んでしまうという行為は、なかなか本芸だな、と思った。
 今年はあの、DVDボックスを買ったことで知られる「おっさんずラブ」も新シリーズが始まったことだし、ファルマンの情感的な部分が刺激され、痛々しい物質がたくさん醸成されればいいな、と期待している。ちなみにファルマンはその昔、「犬夜叉」のなりきりチャットをやっていたそうです。最近知りました。傷だらけだな。