2025年8月1日金曜日

生きているだけで・奇特・純粋理性批判

 ここ数日、スーパーに行ってもあまり食材を買う気が起きず、店内をさんざん巡った挙句、スポーツドリンクと食パンしかカゴに入ってない、なんてことが何度かあった。こんなことは今まで経験がなく、どうしてだろうと思案した末に、そうか、俺はいま、暑さで食欲が減退しているのだな、と思い至ったのだった。今年の、この10日間ほどは、なんだか本当に暑くて、そのくらい参っている。創作も筋トレもすべて諦め、ただ精いっぱい生きている。そのため晩ごはんの献立を考えるのも非常に苦労している。ひとりだったら毎晩、なんかしら魚を唐揚げにしてレモンをかけたもので酒を飲み、そのあと少しだけ冷たい麺を啜って終わらせていると思う。でも子どもがいるのでそうもいかず、苦労して捻り出している。盆の休みあたりを境に、いくらかフェーズが変わることを切に願っている。こんな状況で思い出すのは、去年のやす子とフワちゃんのことだ。「生きているだけで偉いのでみんな優勝でーす」と言ったやす子に、フワちゃんは「お前は偉くないので予選敗退でーす」と言ったのだった(本当はもっとひどいフレーズも含む)。夏、生きるのに精いっぱいになるたびに、僕はこのことを思い出すのだろうと思う。

 夏休みということで、ぼちぼちファルマンの上の妹一家が実家へとやってきて、そして盆の休みに義妹の夫もこちらまで来て、家族を回収して兵庫に戻るという、いつものパターンが繰り広げられるようなのだが、仕事が忙しく、今年の夏は休みが短いという義妹の夫は、しかしそれでも島根まで来た折り、彼にとっての実家の面々とともに広島に野球を観に行くのだそうで、それを聞いた瞬間、なんて奇特な奴だろう、なにが愉しくてこんな真夏にわざわざ広島まで野球を観に行くというのか、と本気で不可解に思ったのだけど、たぶん義妹の夫に言わせれば、もとい世間的な評価で言えば、趣味と言ったらもっぱらオリジナル水着作りという人間のほうが、よっぽど奇特であろうと思った。いい趣味なんだけどなあ。プロ野球って、休みの日の試合なんかは、平均すると3、4万人くらいは客が入るのだろうか。だとすれば6試合で20万人あまりが野球観戦をするし、なんならテレビ観戦の人も含めれば圧倒的な数ということになる。その裾野の人数がそれぞれオリジナルの水着を作ったら、すさまじいものが出来上がるだろうになあ、と思う。

 「パピロウせっ記」で企画の立ち上げを告知した、神楽陽子による二次元ドリーム文庫全作品の感想文投稿を、はじめはそのまま「パピロウせっ記」でやろうかとも思っていたのだが、なんとなく思い立ち、専用のブログを創設した。
 タイトルは「CRITIQUE OF PURE REASON」で、これはなにかと言えば、カントの「純粋理性批判」(ドイツ語による原題は「Kritik der reinen Vernunft」)の英語版タイトルである。かつて、「二次元ドリーム文庫」とブログに記すのはなんとなく気が引けて(いまも大概だが、昔の僕はいまよりももっと純潔だったので、「二次元ドリーム文庫」や「美少女文庫」といった言葉を並べるのは、アクセス数稼ぎのようで不純であると考えていたのだ)、前者を「純粋理性批判」、後者を「社会契約論」と呼んでいたのである(しかしいま考えてみると、そちらの哲学書のほうがよほどアクセス数稼ぎになるのではないかと思う)。そのいきさつから、このタイトルとなった。タイトルを見た瞬間に意図がピンと来た人は、相当なインテリかつ、熱心な僕のファンだろう。つまりこの世にひとりもいないことだろう。じゃあよかった。ひとりぼっちよりも、ひとりもいないほうが、つらい思いが少ないものね。
 「CRITIQUE OF PURE REASON」、せっかくブログとして始動させたからには、神楽陽子作品の感想文だけではなく、二次元ドリーム文庫にまつわる他の試みも展開していきたいと思っている。パピロウのブログでいまいちばん盛り上がってるのがここだ。20年間ひとりぼっちのダンスホールで、僕はいまこのエリアでステップを踏んでいる。