2025年2月12日水曜日

髪の企て・集団Tシャツ・哀しい色やね


 思えば髪型が安定しない系男子である。形そのものは、「なんとなく丸い感じ」というのが通底しているが、その長さや色が、いつまでも固定しない。行きつけの理容店がないというのも要因かもしれない。世の中の男性は、2ヶ月にいちどそこに行くと、「いつもの」という注文で、それまでの2ヶ月分がリセットされるという、そういう仕組みになっているようで、楽でいいなあと思うと同時に、そんなのめちゃくちゃつまらないな、とも思う。
 いまの僕は、たしか晩秋くらいに脱色をし、それっきりなので、プリンを超えて逆ポッキーくらいの感じになっている。表面は金だが、少しかき上げれば中はほぼ黒い。長さは、少し前までわりと長かったが、毛先が見苦しい感じになったので、ファルマンに全体を梳いてもらうのと一緒に、その部分のカットを頼んだことにより、短くも長くもなく、「普通」である。
 それでこれからどうするつもりなのかと言うと、あくまで現時点での気分だが、ここでひとつ、本腰を入れて髪を伸ばしてみようかと考えている。乱れた毛先を切ったのもその布石だ。「髪を切らない」という考え方で、ただ伸ばしても、どうやら長髪というものは成立しない。41歳になり、何度か失敗を繰り返したことで、ようやくそのことに気付いた。長髪を成立させるためには、髪をいたわり、世話してやる必要がある。長くて、荒れている髪は、目も当てられない。長い髪は、きれいでなければ成り立たないのだ。
 そのため先日から、ヘアケア的なことを心掛けて暮している。ドライヤーも温風のあと冷風で仕上げているし、就寝時はヘアキャップを被っている。ヘアブラシも、豚の毛のものを使いはじめた(ネットで検索したところ、豚の毛がいいということなので、ファルマンに「買ってもいいか」と訊ねたところ、「豚の毛のブラシならある」と言って、引き出しの奥から出してくれた。なにかの折に人からプレゼントされたらしいが、本人が使っている姿はいちども見たことがない)。
 まだそこまでの変化は見て取れないが、これから髪が長くなってきたとき、今度こそ金谷英美(「ガラスの仮面」でマヤとともにヘレンケラーオーディションを受けたごつい少女)のようにならず、サラサラのきれいな感じになったらいいと思う。今年の夏は俺、ポニーテールで過そうと思うよ。

 まだ多少気が早いのだけど、Tシャツのことに思いを馳せている。所持しているTシャツが、わりとベテラン揃いになってきていて、くたびれもそうなのだけど、だいぶ飽きが来ているので、今年はちょっと新物を仕入れたいな、と考えている。
 それでいま目をつけているのが、クラT的な、特定の集団によるオリジナルのプリントが施されたTシャツだ。僕自身はそういうのに縁のない半生を送ってきて、そういうのを作ってみんなで着るような集団に実際に属したいと思ったこともないけれど、その集団が、実際には僕が所属していない、もちろんTシャツが実在するということは実在するのだけど、僕にとっては架空も同然というような、縁のない集団であれば、そのオリジナルデザインTシャツを着るというのも一興なのではないかな、と思ったのだった。この嗜好は前からあって、クラTならぬクラショーを自作したこともあった
 というわけで先日から、フリマサイトでその手のTシャツを探している。ところがなかなか思ったようなものが出てこない。クラス全員のファーストネームが列記されているようなものがいいのだけど、そういうのはさすがにあまり出品されないようだ。部活のTシャツというのはそれなりにあるが、やはり体育会系が多く、そうなると素材がポリエステルなどのスポーツニットになってしまうので、それも意にそぐわない。
 まだ夏まで間があるので、気長に探そうと思う。

 三女がコツコツと実家の整理をしていて、巣立っていった姉たちが置きっ放しにしているものなどを、勝手に捨てるわけにもいかないので、たまに渡してくるのだった。
 先日はそれで、ファルマンの小学校の卒業文集というものがわが家にやってきたので、ファルマン以外の家族3人で、大笑いしながら眺めた。内容は、作文と、全員が同じ項目に答える質問コーナー。作文ももちろんおもしろかったのだが、そちらは長いので割愛するとして、最もファルマンらしさが出ていたのが、質問コーナーの中の、「好きな色は?」という問いに対する答えだ。これはまあ、質問自体が、訊いてどうする、という性質のもので、他の子の回答を見ると、「あか」とか「くろ」などと書いてあり、それ以外どうしようもないわけだが、それにしたってあまりにつまらない設問なのだった。
 でも卒業生の中にひとりだけ、本当にひとりだけ、この質問に対し、「おもしろく」答えていた児童がいたんですね。誰もがボケようがないとあきらめていたお題に、その子だけがあざやかにボケてみせたのです。それがもちろん、われらがファルマン。
 小学6年生のファルマンはこう答えていた。
「海の色、空の色、草の色」
 さすがとしか言いようがない。信じられない。こんな華麗なシュート見たことない。われらがファンタジスタ、ファルマン。思い出して、一生笑えると思う。