2024年9月20日金曜日

湯ったり不倫・水棲じいさん・管理会社より

 誕生日である。41歳である。ただし平日なので特にどうということもない。ふいに1年前の日記を読んだら、9月18日、同じく3連休前の金曜日、僕は退勤後におろち湯ったり館へ繰り出していた。今年もやったろうかと少し思ったが、結局よした。ブログに書かなかったが、盆休みの、帰省から戻ったあとの残りの休日で、実はいちど湯ったり館に行っていた。行っていたのだが、どうにもいつもの喜びが得られず、それはなぜかと言えば、キャッスルイン豊川の快感がまだ体に色濃く残っていたからに違いなくて、絶倫の巨根と不倫をした結果、夫のつましやかなそれでは満足できなくなってしまった若妻のような、申し訳ない気持ちになったのだった。しかしあれからひと月経って、そろそろ膣に残る感触も薄れてきたので、行ったら愉しめるのではないかとも思うし、それでもやっぱりあたしはあの最低のチンポ男のことを思い出してしまうのかもしれない、とも思う。これからいい季節になるので、2階が封鎖される前に、どこかで行こうとは思っている。誕生日に僕はいったい何を書いているのか。

 おろち湯ったり館へは行かず、退勤後はいつものホームプールへと赴いた。まだ暑さは続いているのに、どうも先週の3連休が、世間におけるプールシーズンの終了であったようで、そこからガクンと人が減った。人が減って感じたのは水のきれいさで、しかしこれについて深く考えようとすると、真夏の、人口密度の高い、透明度の低い水に関して、気付いてはいけないことに気付いてしまいそうなので、よしておく。
 プールに関して、話題をひとつ。
 行くのがいつも同じ時間帯なので、顔見知りというのがどうしたってだんだんできてくる(決して会話をしたりはしない)わけだが、狭い町だというのに、プールで見かける人を、プール以外の場所で目にするということが、これまで完全にいちどもなかった。それはなんだか不思議なことのように思え、もしかすると僕がプールで見ているあの人たちは、プールの妖精なのかもしれない、プールを出た瞬間に光の粒になって霧散するのかもしれない、などと思っていた。しかし先日、ついに近所のドラッグストアで、プールの歩くレーンによく出没するじいさんの姿を発見したのだった。この瞬間、とても驚いた。プールでしか見たことのなかった人を陸上で見かけると、「水棲生物なのに!?」という衝撃があるのだと知った。たまに、川などの水場がそんなに近くにあるとは思えないような場所に、カニがいたりすることってあるじゃないですか。あれとまったく同じ気持ち。そしてたぶん、じいさんも同じような気持ちで、僕のことを見ていた。一瞬、しっかり目が合った。

 リビングのエアコンが、10日ほど前からとぼけはじめ、音ばかりはグヮングヮンと強力そうなのに、出てくる冷気はか細くて、まあどう考えても故障なのだった。夏の間、朝から晩まで稼働しっ放しだったわけで、最後の力を振り絞って、なんとか9月中旬まで責務を全うしてくれたのだな、ただし今年の残暑のしつこさたるや計算外だったのだな、などと思った。そしてリビングのエアコンが故障しても、ぜんぜんテンションが下がらないのが、賃貸住宅のいいところで、まあリビングだけで、他の部屋のは自前ではあるのだけど、備え付けであるそれは、管理会社に連絡をすれば、修理なり交換なりを無料でやってくれるのである。今回の場合、もともとのものがずいぶんな年代物であったということで、こちらとしてもそうなればいいなと思っていた、交換となった。リビング用のエアコンと言えば、買ったらだいぶするに違いない。だいぶテンションが下がるに違いない。これだから賃貸住宅っていいよな、と改めて思った。
 しかも交換日は今日と来た。家に帰ったら、轟音と半端なぬくもりで居心地の悪かったリビングが、とても静かで清廉な冷気に包まれていた。僕がこれまでの人生でもらった最も高額な誕生日プレゼントは、管理会社からのリビング用エアコンかもしれない。