2024年7月11日木曜日

休校史実・愛好家たち・交際開始記念日

 七夕のあたりというのは毎年のように豪雨災害になる。岡山時代に真備がすごいことになったり、今年は日御碕の道が陥落したりと、わりと身近なエリアで発生するので、びっくりする。おとといの帰り道では、テレビでたまに見るような、地面に10センチくらい水が溜まっている場所があり、前の車が普通に進めていたので「まあ大丈夫なんだろう」と思って通ったけれど、なかなかおそろしかった。
 おととい昨日と、線状降水帯も発生し、かなり荒れていたが、今日になってやっと少し落ち着いた感がある。まだ雨は残っているが、いわゆる普通の雨の日だった。
 そして子どもたちは学校が休みだった。
 昨晩に連絡が来たのだった。教育委員会の方針により、全校休校であると。
 真備のときもそうだったが、学校はいつも、風雨がとんでもなかった日の次の日を休校にすることだ。判断が難しいのは分かるけれど、災害級のそれが過ぎ去った翌日の休みで、その前日の、「いま思えば危険だった登校」が救われるわけではない。しかし実際には救われるわけではないのだが、長い目で見たとき、その前後関係は曖昧になり、「真備の水害の際は、子どもたちの安全確保のため学校を休校にした」という史実だけが残りそうで、これはそのための休校なのではないか、と勘繰ってしまう。
 いや、まあ、判断が難しいのは分かるけれども。でもほら、俺、権力が嫌いだから。教育委員会の方針、などと言われると、とりあえず文句を言いたくなるんだよな。

 通っているプールには週にいちどの定休日があって、普通に営業している日には、泳ぐ気分にならず行かなかったくせに、定休日に限って「今日プールが開いてたらなあ!」と地団駄を踏みたくなるほど泳ぎたい気分になる、というのは、プールあるあるだと思う。たぶん会員同士で話したら、「めっちゃわかる!」と盛り上がることだろう。会員に親しい人がひとりもいないので、想像だけども。
 ところで先日、プールの更衣室で、僕以外の会員同士がこんなやりとりをしていたのである。
「〇〇さん、明日はプール、休みですからね」
「分かってるよ」
「休みなんですからね」
「分かってるって」
 そのときは、うるせえなあ、つるむ奴ら嫌いやわー、としか思わなかったのだけど、あとになって、なんだあの会話、と思った。だってプールの定休日は、会員なら分かり切っていることなのだ。それなのになぜそれをわざわざ声に出して伝えたのか。
 怪しい、と思った。
 連想したのは、最終バスが行ったあとの深夜に、なぜか運行しているバスだ。それは知る人ぞ知る乱交バスで、愛好家たちがひそかにスリルを味わっている。主人公の女の子は、間違えてそれに乗り込んでしまい、ひどい目に遭うのである。
 そういうパターンのエロというのがあるだろう。
 もしかしてそれなのではないか、と思った。
 定休日のプールには、普通の人間は近付かない。なぜなら定休日だからだ。しかし実はそこでは、プールを舞台にした酒池肉林が開催されているのではないか。だって、そうでもなければあの会話は本当に理解ができない。たしかに日々どうでもいいことを大声でのたまう迷惑な人たちだけど、それにしたって文言通りであればあまりにも無駄な会話である。もしかしてあれは、周囲に向けて、新たな参加者を募るメッセージだったのではないか。そんなの創作の世界だけの話だと思っていたのに、現実にあるんだな。
 だとすればもったいないことをした。僕はその翌日の、定休日のプールには行かなかった。行けばよかった。水着ものっていいよね。

 7月8日はファルマンと僕の交際開始記念日である。
 毎年、祝うんだか祝わないんだか、とても微妙な扱いで、今年ももちろんそうだった。それでも仕事帰りに、なんかしら買って帰ろうかしらと思い、なににするかしばし思案する。
 花は、ずっと前にあげたところ、ファルマンは花瓶の水を取り替えることをせず、花と水が腐臭を放ち、さらには虫もたかって、さんざんな気持ちになったので、もう二度と贈るまいと思った。
 ケーキは、先日書いたように家族で僕ばかりが突出して好きなだけで、子どもたちはそうでもないし、ファルマンに至っては「重い」と言って半分残し、「あとは明日食べるね」などと言っておきながら、そのまま冷蔵庫で腐らせたりするので、やはり贈ってもろくなことがない。
 そんな思考の末に僕が買って帰ったのが、日本酒とかっぱえびせんで、ファルマンは「これよ、これ」と満面の笑みを浮かべた、21年目でありました。