2019年6月18日火曜日

ハリーポッター・バケモノ・飴師匠

 数ヶ月前にファルマンとポルガの中で強烈なハリーポッターブームが起り、そのとき僕は、刊行中だった当時に4巻とか5巻くらいまでは読んで、でも次のが出る前に話とかキャラクターとか忘れるから、後半で話がややこしくなってくることもあり、入れ込めずにフェードアウトしたという、こういう人すごく多いんだろう的な、読んだとも言えるし読んでないとも言える、そういう立場だったので、ふたりのブームに対しても、やはり原作に対するスタンスと同じくらい、入れ込めずにいた。
 そんな僕だったのだけど、このたびとうとう、さしあたって読む本がないこともあり、いっそのことハリーポッター読んだろうやないか、と発起した。発起するにあたり、家族のふたりや、さらには世間のハリポタ好きとか、USJとか、映画とか、そういう要素をすべて頭の中から消して、ハリーポッターに対する期待も嫌悪も一切ない状態で読もう、と思った。僕はなにしろ、この本が好き! とか、この話の大ファン! みたいなことをのたまう人間が大嫌いなのだ。だからそういう人が多そうな本は絶対に読みたくないのである。それなのにハリーポッターを読むことにしたのである。なので本当に、4000年後くらいの未来人が、失われた文明の図書館で見つけたくらいのまっさらな気持ちで読んでいる。いまハグリッドがハリーを迎えに来たところ。ダーズリーはハリーを嫌っておきながら、どうしてあんなにハリーを手放すのを嫌がるのだろう。

 幼稚園の母親たちのグループLINEで、園の行事に関する分かりにくかった部分を、ひとりの母親が園に確認をして、その詳細を伝達してくれた、ということがあったそうで、それに対してグループのメンバーである他の母親たちが、みな次々に「ありがとうございます」という要旨のスタンプを貼っていく、という流れがあったという。その様を見てファルマンも、正体はバケモノながら、必死に隠そうと人間社会でがんばっているので、流れに乗ってスタンプを貼ったのだ。
 ブラックジャックのピノコの。
 そうしたら、実際にその画面を見せてもらったのだが、おもしろいようにそこでその流れが止まったのだった。誰ひとりとして足並みを乱す者もなく、ピタッと。
 かわいそう、とさすがに思った。
 たしかに他の母親たちの貼るスタンプは今風の、カナヘイ風の、うさぎとか猫とかの当たり障りのないものばかりで、その中にいきなり現れた手塚治虫は一同を唖然とさせたことだろう。しかしだからと言って、そこまで明白に流れを止めるなんて、みんなちょっとファルマンいじりが優秀すぎるんじゃないだろうか。いいぞもっとやれ。

 今日、職場でおばさんから、「ちょっと痩せた?」と言われ、欣喜雀躍した。
 やっと言われた。この数ヶ月の摂生と運動によって体が引き締まったことは、鏡を見たって体組成計のデータ(毎日計っている)を見たって明らかなのだが、しかし人から言われる喜びというのは、それらとは較べ物にならないものがある。本当に嬉しい。思わず前のめりになって、いま運動とかして体を鍛えているのだ、ということを語った。痩せるのは本来の目的ではないのだが、とは言え摂生しているので副産物として痩せちゃった形なんだよね、と普段びっくりするくらい喋らないのに、朗々と語った。それくらいテンションが上がった。
 ちなみにそれに気づいたおばさんというのは、前から話にちょくちょく登場している飴師匠その人であり、この数ヶ月間においても飴師匠はもちろん通常運転で僕にちょいちょい飴をくれていたのだが、「あざーす」と受け取りながら、それらはすべて引き出しにしまい込んでいるのだった。糖質やGI値のことを気にして飴師匠の飴は舐めなくなった僕だけど、さすがは飴師匠、僕にとびっきりの甘い喜びを与えてくれました、というお話でした。