2018年3月9日金曜日

咳・蒼井優・落語

 夫婦で咳をしている。インフルエンザB型禍が我が家から過ぎ去り、すっかり平和になったかと思いきや、目下しつこい咳に苛まれているのだった。咳というのはいちど始まると本当にしつこい。しかもそれ自体が不快で嫌なのに、社会的にも弊害がある。クシャミの、あっけらかんとしたコメディチックな印象と較べて、咳には眉をしかめたくなる不穏さがある。咳が始まってから、職場ではもちろんマスクをしているが、それで完全に許されているとは思っていない。僕だったらはっきり言ってあまりこんな奴には近寄りたくない。マスク着けてるからって感染しないとはぜんぜん限らない。1週間以上もダラダラと続いているので、「もう我々は一生このままなんじゃないだろうかグホグホ」とファルマンが嘆き、「だとしたらそんな夫婦には絶対にもう友達はできないグホグホ……」と僕が絶望すると、「安心して。咳とか関係なくできないからグホグホ」とファルマンが慰めた。もう悲壮感が多重の層のようになって、じっと手を見ることさえできない。

 蒼井優のアカデミー賞でのスピーチが感動的、という話があって、別にそれほど感動的ではないと思うけど、通り一遍のことを言うよりはもちろんいいと思った。そして「これから新学期はじまりますけど、学校がつらい方、新しい生活どうしようと思っている方がいたら、ぜひ映画界に来ていただきたいなと思います。映画界ってよくないですか? 私ほんとに好きなんです。みなさんと一緒に映画を盛り上げていけたらなと思います」という文面の、映画という部分、これは蒼井優が映画女優だから映画であるだけのことで、実は人それぞれに、なにに置き換えてもいいのだと思った。
「ブログってよくないですか? 私ほんとに好きなんです」
「エロ小説ってよくないですか? 私ほんとに好きなんです」
「AV業界ってよくないですか? 私ほんとに好きなんです」
 近日中に僕になにか受賞の機会があれば絶対にやるのだけど、なにかないだろうか。

 昨日「PAPIROTOIRO2」に投稿した「嘴亭萌え狼らくご「水下着」」は、実はここ数日で書いたものではなくて、もう2年くらいも前に、創作落語の懸賞に応募して、箸にも棒にも掛からなかったものである。あまりにも箸にも棒にも掛からなかったので(わりと自信があったというのに!)、いつか別の懸賞にまた応募してやろうと思い、ハードディスクで眠らせていたが、いつか別の賞ってなんやねん! と、途轍もなく長いノリツッコミを昨日ようやく炸裂させて、ペッペッペーとアップした。アップするにあたり読み返してみて、やっぱりおもしろいと思った。でもそれは僕が、僕のおもしろいと思うものを書いたから、当然の話であり、そしてただそれだけのことなのだと思った。