2018年8月8日水曜日

裏口・10年・ぽんぽこ

 太田光が裏口入学だった、という報道に驚く。真偽のほどはよく知らないけれど、なにが衝撃って、裏口入学のスケールだ。裏口入学と言えば、いま騒がれている文部科学省の大物の息子と東京医科大のやつ、ああいうのはスケールがきちんとしていて納得できるのだけど、この話の場合、いや、だって、日芸だぜ? となる。悪質なタックル大学夢見がち学部だぜ? この異様さを例えるならば、死ぬ前の最後の晩餐のリクエストを訊ねたら、超高級料理でもなく、逆に「白米」みたいな素朴なやつでもなく、「すかいらーく」という答えが帰ってきたような、なんかそんな気持ち。えっ、えっ、なんで? といちばん戸惑うパターン。
 なんだか今年はこういう系のニュースがおもしろいな。悪質なタックル大学と違って直接の関係はないが(悪質なタックルとも実際は関係ないのだが)、日本アマチュアボクシング協会の話ももちろんおもしろい。この一件では、「奈良判定」というフレーズがとてもいい。悪質なタックルにしろ、奈良判定にしろ、やっぱり秀逸なフレーズがひとつあると強いな、と思う。年末の例の賞への期待もいや増す。
 ちなみに記事を読んだわけではないが、太田光の自力での合格なんて怪しい、という趣旨でのエピソードとして、太田光は割り算さえできなかった、という話があるらしいが、日芸の学科試験は国語と英語だけだろう。それとも太田の時代は違ったのだろうか。

 婚姻届を出したのは2008年の8月8日なので、今日で結婚10周年なのだった。
 10年。ずいぶんな月日である。10年になってくると、夫婦としての格がちょっと変わってくる感じがある。そうそう生半可なもんじゃねえぞ、という雰囲気が出てくる。
 そんな記念すべき10周年なのだが、ファルマンは子どもたちとともに島根に帰省中なので、見事に離ればなれなのだった。この予定を組んだとき、10周年の日に離ればなれになるということはもちろんその場で判明したのだけど、結婚10周年というのは、それによって予定を変更するほどのパワーはないのだった。一緒にいたところで、きっと特段どうということもしないのだ。でもなんかしらの行動はしなければ、と考えて、まず間違いなくケーキを買って食べていたろうと思う。しかしケーキは先月の交際開始15周年にも食べた。だからこれでむしろよかったかもしれない。
 あの夏の練馬から10年。あの夏は冷夏だったんだよな、たしか。そのことひとつ取っても隔世の感がある。

 ひとりの夜、娘らのワンピースを縫いながら、観たいテレビもなかったので、「平成たぬき合戦ぽんぽこ」を観た。けっこう久しぶりに観た感想として、もっとスカッとおもしろい娯楽作品と思っていたのが、実は全編を通して悲壮感があり、逆に、こんなにも哀しいストーリーを、娯楽作品と勘違いさせるほどに、巧みに可笑しく作っていたのか、と思った。圧倒的な力によって、生きる場所も食べものも、無慈悲にどんどん奪われていくあの話は、哀しく描こうと思えばいくらでも哀しくできるだろう。それを、主人公を狸にしたり、声優に噺家をたくさん使ったりすることで、一見愉快なものにしているのだ。その愉快さが、こうして気付くと、また逆に哀しかったりもして、やっぱり高畑勲っつうのもすげえんだな、といまさらながらに強く思った。