灯油が余っていた。灯油余り問題は、この2ヶ月弱、われわれ夫婦を悩ませていた。
『給油はガソリンと同時に、灯油も入れた。灯油缶は家にふたつあって、いま1缶は空になり、もう一方も残りが半分くらいという状態であり、かなり悩んだ。もしかしてもうこの半分ほどの残りで乗り切れるんじゃないのか、ここで1缶分の補充をしたら持て余すことになるんじゃないのか、と。しかしファルマンと協議した結果、まあ朝晩は寒いし買っておくか、という結論に至った。買ってしまえばやはり心強い。もしこのままどんどん暖かくなり、持て余したとしても、この時点での安心を買ったのだと思えば損はないと思った。』
「おこめとおふろ」にこの記述がなされたのが、3月5日のこと。それ以降さすがに買い足すことはしていないはずなので、このときのものがずっと残っていた。今年はやけに見誤った。言い訳するならば、春先、住んでいるコーポの外壁塗装工事があり、エアコンが使用不可だったというのも、灯油との関係が断ち切れなかった原因のひとつだと思う。
5月になっても余っていた灯油を使い切るべく、少し肌寒い朝などに積極的にストーブを稼働させたりしたが、どうもストーブとしてももはや気合が入らないらしく、冬場はあれほどすぐに給油を呼び掛けてきたくせに、ほぼ燃焼していないようで、いつまでもタンクは空にならないのだった。
そしてとうとう6月に突入し、ストーブの横に扇風機が並ぶという、珍奇な風景がリビングに展開された。これはもういよいよダメだろうと、使用するのは諦め、どうにか処分するしかないだろうと観念し、検索したところ、とあるガソリンスタンドで回収してくれるという情報を見つけ、電話で確認した結果オッケーとのことだったので、持っていった。そうしたら、ピットの奥に巨大なオイルポットのようなものがあり、そこに注ぐというシステムだった。ガソリンスタンドでは、なんかしらの作業に使用できるのだろうか。それならいい。わが家で3ヶ月以上くすぶった灯油も浮かばれるというものだ。
長らく懸案事項だった灯油が片付き、部屋も心もとてもすっきりした。来年はこんなことにならないよう立ち回りたいが、まあ余らしてもこの手段があるのだな、という経験則を得た。
とにかく明るい安村がイギリスのオーディション番組で大ブレイクしたというニュースに触れ、とても喜ばしい気持ちになった。
しかしこの番組の映像を見てひとつ思ったこととして、安村がポーズを取ったあと、「安心してください、穿いてますよ」の英語ver.として、「Don’t worry, I’m wearing」と言うと、向こうの審査員の女が言い出したらしい、「パンツ!」というコールをする、という流れがあるのだけど、向こうの人って、安村が穿いている、いわゆる下着としてのあれを、なんだ、パンツって言うんじゃんか。
なんかほら、向こうの人が言うパンツって、われわれがズボンと呼んでいるものを指すのだとか、たぶん四半世紀前くらいから急に言われ出して、ズボンという表現はダサく、死語であり、これはパンツ(イントネーションは尻上がり)であるという、なんかそういう風潮があっただろう。でもなかなか定着せず、「パンツ」で商品検索すると、ズボンと下着、両方同じくらい出てくるという、にっちもさっちもいかない状況が、日本ではずっと続いていたじゃないか。
でもこのたび結論が出た。下着がパンツでいいのだ。だから、パンツはやっぱり下着なので、ズボンはズボンと呼べばいいのだ。向こうの人たちがなんと呼んでいるのかは分からない。ズボンでないことは確かだ。ズボンは、脚をズボンと入れるからズボンなのである。なんと愛らしい語源であろう。堂々と使っていきたい。