2022年9月18日日曜日

ほん怖・運動会・ピザ

 本当にあった怖い話をひとつ。
 平日の退勤後にプールに行ったときの話です。その日は、プールに行くことを朝から心に決めていたのですが、そんなときに限って仕事が忙しく、普段の退勤よりも1時間半ほど遅くなってしまったのです。それでもやはり泳ぎたい気持ちが強かったので、少しだけ泳いで帰ることにしました。そう決めたら、それはそれで愉しみな気持ちが湧いてきました。それというのも、普段行く時間帯に泳いでいる人たちというのは、顔見知りというわけでもないのですが、どうしたってだんだん顔を覚えてくるもので、ああ今日もあのじいさんがいるな、あのムキムキの男がいるな、そして私が2日おきだったり3日おきだったりに行ってもいつもいるということは、この人たちはたぶん毎日ここに来ているんだろうな、なんてことを思うわけですが、今日はそれが1時間半も遅いので、泳いでいるメンツがぜんぜん違うはずです。遅い時間ということで、閉館時間まで泳ぎ続けるようなよほどのガチ勢が多いのではないか、ガチ勢にレーンを占拠されて、入る隙がなかったら少し嫌だな、なんてことを思いながら、私はプールエリアに出たのです。するとなんだか嫌な感じがするんですね。なんだろう、嫌だな、怖いな、と思いながら、私はそろりそろり、プールへと向かいました。そしてたどり着いたとき、そこに広がっていた風景に、私は腰を抜かしそうになりました。
 それというのも、そこで泳いでいたのは…………、いつものメンツだったからです。
 キャーーーーーー! (女性の悲鳴)

 先日、子どもたちの運動会が執り行なわれ、夫婦で観覧した。この2年は、運動会自体がなかったり、あっても保護者の観覧不可であったりしたため、だいぶ久しぶりというか、ピイガに至っては小学校の運動会に出ているのを観るのが、3年生にして初めてだった。
 しかしなんとか開催にはこぎつけたものの、やはり簡易版ということなのか、演目は個人の徒競走と、チーム対抗で全員が参加するリレーという、全学年においてそのふたつで、だから運動会は、ほとんど短距離走会だった。ずっと誰かしらがひたすら走っていた。
 感染対策であるとか、時間短縮であるとか、いろいろな理由はあるのだろうが、しかしあまりにもシンプルで、シンプルと言えば聞こえはいいが、まるで文明がない世界のようだな、とも思った。戦後、物資はなにも満足になかったが、しかし希望だけは満ち溢れていた、みたいな、そんな感じ。それでいて、別に人々の心に希望は満ち溢れていない。
 インスタグラムで、外国の、説明不要で「わー!」となる画像や映像が垂れ流される様を眺めていると、文明が成熟した果てには、こんな原始的な風景が広がっていたのか、と虚しい気持ちになったりするが、道具もややこしいルールもなくただ走るだけの運動会にもまた、同じような感情を持った。きっと感覚が古いんだろうな。ぜんぜんSDGsじゃない、無駄で余計なものに浸って生きてきたので、最小公倍数のような清貧の世界に、違和を抱いてしまう。居心地悪くなってしまう。頑固親父、まっしぐらである。

 ピザを作る。GWに母から生地のレシピを教えてもらい、ずっと冷蔵庫に貼ってあったのだが、ここまで手を付けずにいた。言い訳をするなら、かつてファルマンが買い、ポルガの出産前後に10回くらい食パンを焼いたあとは放置され、どこかのタイミングでファルマンの実家に渡っていたホームベーカリーを、混沌という名の屋根裏部屋から回収するのに時間がかかったのだ。それが成ったのが8月だったので、暑さとかもいろいろあり、さあそれではピザ生地というものを初めて作ってみようかな、となるのがシルバーウィークになってしまったのも、致し方ないと思う。しかし改めて母にLINEで教えを乞いながら製作したところ、ここまで引っ張ったのが阿呆らしくなるほど、簡単なことだった。材料を分量通りに内釜に入れ、あとはコースを設定して作動スイッチを押せば、じきに生地はできあがった。それだけだった。それを伸ばして、ピザソースを塗り、用意していた具を乗せて焼いたらば、紛うことなく立派なピザだった。普通においしい。なんの問題もなく、1回目から万全においしいピザができあがった。どうやらピザもあれだな、シュウマイと同じ部類で、作ったことがない人には手間がかかるように見えて畏敬の念が集まりがちだけど、いざ作ってみたら想像よりもはるかに簡単という、対外的コスパに優れた食べ物のようだな。こんど仲間の誰かのホームパーティーの誘いがあったら、絶対に持っていくことにしようっと。

2022年9月8日木曜日

痩せ・値上げ・ピコピコ

 体重を半月に一度くらい計るのだが、そのたびにじわじわと、200gぐらい減っている感じがあり、6月に54kgあったのが、今は52kgになってしまった。特に瘦せようとしているわけではないのだが、普通に日々の摂取カロリーが消費カロリーよりも少なくて、その結果ジリ貧のように体重が目減りしてきているのだと思う。筋トレとプロテインは続けているが、それなのに筋肉が盛り上がっていかない、体が分厚くならないのは、単純にそこに原因があるのだと、気付くのがすごく遅いが、気付いた。
 糖質オフダイエットということが言われ、炭水化物を忌避する向きが世間にはあるが、僕は炭水化物に関しては、これまでも特に節制していなかった。それよりも脂質をものすごく意識していた。物を買う際は、栄養成分表を見て、脂質の数値がたんぱく質よりも大きいものは、極力買わないように心がけていた。別にたんぱく質が脂質を相殺させるわけではないのだが、それを目安としていた。これはこれで正しい心がけだろうと思う。脂質はまあ、なるべく摂らないほうがいいんだろうと思う。なので僕の場合、増やすべきは糖質だ。具体的に言うと、これからはもっとお米を食べようと思う。節制するつもりはなかったが、そこまでたくさん食べたいとも思わず、たぶん一日のお米の消費量としては、小学生の娘たちよりも少なかったのではないかと思う。それじゃあ筋肉は増えていかない。筋肉がついている人なのか、ただ痩せているだけの人なのか、ぱっと見じゃ判らない境地から、いよいよ脱却したいのだ。
 今年の秋は、強迫観念食欲の秋。

 物価が高くなって嫌だが、それ以上に嫌なのは、物価が上がったことを伝える報道だ。世の中には気分がくさくさするニュースが多いけれど、物価の上昇というものは、その最たるものだと思う。物価の上昇のことを憂うと、日本人はそれだから経済が発展していかないんだ的な、健全なインフレだのなんだのと、すかさず言ってくる輩がいるけれど、言いたいのはそういうことではない。僕が嫌なのは、ニュースのあの感じなのだ。視聴者を暗い気持ちにさせるのが趣味なのか、ニュース番組というのは、物価の上昇についてちょっと偏執的ではないかと思う。値上げの品目を、そこまで精細に調べ上げなくてもいいだろう、そうやってなるべく身近な商品を持ち出してなるべくショックを受けやすいよう工夫を凝らさなくていいだろう、と思う。
 9月1日から値上げされる品目のニュースで、9月1日はじっとりと嫌な気持ちになった。そしてどの番組も最後に必ずこう言った。「値上げされる品目が最も多いのは10月」と。10月1日はテレビを観ないように心掛けようと思う。

 自分が10代の頃はさんざんやったくせに、大人になってみたら、テレビゲームってすげえ時間の無駄だな、と思うようになった。思うようになるんだな。eスポーツなどと言って、最近はゲームの地位が向上したと言われるが、頭の固い大人なので、理解が及ばない。なに言っとんねん、テレビゲームやろ、ピコピコのやつやろ、と思う。このピコピコという表現も、古いゲーム機の名前を言って若者にバカにされるくらいなら、総称というか、蔑称というか、総蔑称というか、「お前らが時間を費やしているのはすごく虚無的でくだらないものなんだよ」という思いを言外に伝えようという意志が漲っていて、とてもいいと感じるようになった。
 そんな大人になった僕が、目下さらに輪をかけて理解が及ばないのが、ゲーム実況だ。自分自身でやるゲームでさえ時間の無駄だろうと思うのに、他人がプレイしているのを観るものだという。なんやそれ。もう自分でピコピコさえせえへんのかいな。虚無すぎるやろ。虚無も虚無、大虚無や。生み出さなさに生み出さなさが掛け合わされ、しかしその経済規模は年々増大しているのだそうで、なんかもう、ただただこの世に白けてゆく。生きづらい。